夏こそ飲みたい「甘酒」〜伝統的な発酵飲料のパワーを知る〜
冬の飲み物というイメージが強い甘酒ですが、じつは夏の季語にもなっているほど、昔から夏場に親しまれてきた飲み物です。まさに、これからの季節にぴったり! 今回は、身近なようで意外と知らない「甘酒」について紹介します。
「甘酒」の基礎知識

そもそも「甘酒」とはどんな飲み物なのでしょうか。「歴史」「種類」「栄養」に分けて解説していきます。
甘酒の歴史
甘酒の歴史は古く、起源も諸説あります。ここでは、通説となっている有力な2つの説について見ていきましょう。
甘酒の起源は?
日本最古の歴史書『日本書紀』に出てくる2つの飲み物が、いまに伝わる甘酒の原型と考えられています。順に紹介していきます。
- 「天甜酒(あまのたむさけ)」
神話時代に登場するのが、「天甜酒」です。このお酒は、女神・木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)が、夫である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト:天孫降臨した天皇の祖神)の子を無事に出産した際に醸されたといわれています。作り方などが詳しく書かれているわけではないものの、「狭名田(さなだ)の田の稲を以て……」という一節があること、お酒の名前に「甜(あまい・うまいの意)」という字が入っていることから、お米を原料とする甘酒のようなお酒だったのではないかと推測されています。ただ、現代の甘酒というよりは、酸味の効いた「どぶろく」に近かったのではという見解もあるようです。
- 「醴酒(こさけ)」
次に登場するのが、「醴酒(こさけ)」です。このお酒は、古墳時代にあたる289年頃、応神天皇が奈良の吉野に行幸された際、当地の先住民・国栖人(くずびと)に献上されたとされています。原料や味についての記述がないため、どのようなお酒だったのかは日本書紀からだけでは読み解けないのですが、それを知る手がかりとなる文献が、平安時代に編纂された『延喜式』です。延喜式は律令についての施行細則をまとめた法典で、酒づくりに関する決まりごとなども詳細に記されています。そこに醴酒も出ているのです。配合割合や仕込みのことなど、つくり方も詳しく載っており、要約すると次のようになります。
『旧暦の6月1日から7月30日まで毎日、米4升、麹2升、酒3升を合わせて醸し、醴酒を9升得る(1本ずつ小仕込する)。』
このことから、醴酒は一晩でできる「甘い酒」で「盛夏用」だったことが推測されます。原料に「汲み水」ではなくお酒を使うのも大きな特徴で、それにより酵母の発酵が抑えられ、糖化が促進した甘酒やみりんのようなお酒であったと考えられています。
醴酒が、汲み水ではなく酒を使った甘い酒であったことは、『令集解(りょうしゅうのげ)※』にも書かれています。
ちなみに、醴酒の起源は中国とされていますが、製法などの詳細はよくわかっておらず、さまざまな説があるそうです。そのなかでも広く知られているのが、「麦を主体とした雑穀を粉にして、水を加え、麦芽の粉を混ぜて発酵させた甘い酒」という説。たしかに日本の醴酒に通づるところがあります。
※『令集解』…奈良時代に施行された『養老令』の注釈書。
醴酒から甘酒へ!
お酒を用いてつくられていた醴酒ですが、時代が進むにつれてお酒を使わなくなり、現代の「麹甘酒」の製法になっていきます。江戸時代に入ると、甘酒は庶民の間にも浸透。その漢字もいまではお馴染みの「甘酒」が広く使われるようになりました(※1)。
江戸時代も後期になると、江戸の市中には甘酒屋や甘酒売りが増え、一年を通して販売されるように。一年のなかでもとくに需要が高かったのが夏だったといいます。暑い夏を乗り切る“栄養飲料”として重宝され、多くの人が飲めるようにと価格の上限なども決められていたのだとか。『守貞謾稿(もりさだまんこう)』(※2)によると、江戸では8文、京都・大阪では6文で売られていたようです。ちなみに、8文はいまのお金に換算すると200円前後と考えられています。
※1 「甘酒」という字が初めて登場するのは江戸時代に入る直前のこと。『易林本節用集(えきりんぼんせつようしゅう)』という国語辞書に、「醴」と「甘酒」は同じであるという記載があります。
※2 『守貞謾稿(もりさだまんこう)』は、江戸時代の風俗や事物を説明した、いまでいう百科事典です。
甘酒の種類

甘酒は、大きく「麹甘酒」と「酒粕甘酒」の2種類に分類されます。
「麹甘酒」とは
麹甘酒は、米麹・米(蒸した米またはお粥)・水からつくられる甘酒です。麹菌の発酵により、お米のデンプンがブドウ糖やオリゴ糖に変わり、自然な甘みが生まれます。アルコールが含まれていないため、子どもや妊婦さんも飲むことができます。
※「米麹」と「水」だけでつくるタイプの甘酒もあります。こちらは、お米が入っているものに比べると、すっきりした飲み口です。
「酒粕甘酒」とは
酒粕甘酒は、酒粕・砂糖・水からつくる甘酒です。日本酒をしぼった後にできる酒粕を使うとあって、豊かな風味が楽しめます。アルコールも微量ながら残っているので、運転前やアルコールに弱い方、子どもや妊婦さんには向きません。
甘酒の栄養
「飲む点滴」とも呼ばれるほど栄養豊富な甘酒。この場合の甘酒は「麹甘酒」を指します。というのも、麹甘酒に含まれる栄養素が点滴の成分と似ていることからついた呼び名だからです。では、麹甘酒にはどのような栄養素が含まれているのか? 主なものを具体的に見ていきましょう。
*グルコース(ブドウ糖)
ブドウ糖は脳や体のエネルギー源。麹甘酒の主成分です。
*アミノ酸
タンパク質の構成成分であるアミノ酸。タンパク質は、体をつくるという重要な役割を担っています。疲労回復や体力増強にも欠かせません。麹甘酒には、20種すべてのアミノ酸が含まれているうえに、酵素の力で体に吸収されやすいカタチになっているため、効率よく摂取できるそうです。
*ビタミンB群
ビタミンB群は、糖の代謝や脂肪の燃焼を促す作用があります。エネルギー代謝にも不可欠な成分で、不足すると疲れやすい、だるいといった症状が出ることも。麹甘酒には、ビタミンB1、B2、B6をはじめ、ナイアシン、葉酸などビタミンB群が豊富に含まれています。
ほかにも、米麹に含まれる食物繊維、麹菌が生み出す酵素によってつくられるオリゴ糖など、さまざまな栄養成分がギュッと詰まっています。だからこそ、エネルギー補給がスムーズに行えて、疲労回復効果も期待大。夏こそ飲みたい甘酒!なのです。
夏ならではの甘酒の飲み方
ここでは、夏ならではの甘酒の飲み方(食べ方)を紹介します。
夏は冷やして飲む!

「冷やし甘酒」は、熱中症対策としても効果的といわれています。冷蔵庫で冷やして飲むだけなので、とってもお手軽です。余裕があるときは、スムージーにしたり、ラッシーにしてみたり、好みに合わせてアレンジしてみるのもいいかも。ここでは、麹甘酒とヨーグルトを混ぜるだけの簡単レシピ「ヨーグルトラッシー」を紹介します。
〜ヨーグルトラッシーのつくり方(2人分)〜
- 材料となる、麹甘酒(200ml)、プレーンヨーグルト(100g)を用意する
- 麹甘酒とプレーンヨーグルトを混ぜ合わせるたら完成!
シャーベットにして食べよう!
甘酒をシャーベットにして「食べる」のもおすすめです。作り方は、「製氷器に麹甘酒を注いで、一晩冷凍庫で凍らせる」だけ! 時間はかかるものの、手間はほとんどありません。ぜひ、一度お試しを。麹甘酒はかき氷のシロップとしても活用できます。

「甘酒」を取り入れて、厳しい夏を元気に乗り切りましょう!
“飲む点滴”と呼ばれるほど栄養豊富な甘酒は、夏バテにも効果的。飲み方(食べ方)によっては、熱中症対策としても高い効果を発揮します。とくにおすすめなのが、甘酒シャーベット。ただ凍らせるだけというお手軽さもうれしいですね。そのまま飲むのももちろん、おすすめ。今年の夏は、夏バテ知らずのからだづくりに、甘酒を取り入れてみませんか。

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