自転車に乗って、さあ行こう!〜サイクリングの健康効果を再確認〜

サイクリングは、心身にさまざまなよい効果をもたらすことがわかっています。本格的な暑さを迎えつつある今、サイクリングは「暑熱順化」にも役立つ運動といえます。今回は、サイクリングについて健康という観点からお話しします。
サイクリングがもたらす4つの健康効果

サイクリングがもたらす健康効果は、大きく分けると次の4つです。順に見ていきましょう。
生活習慣病の予防
サイクリングは、代表的な有酸素運動のひとつ。そもそも、有酸素運動は、なぜ健康に良いのでしょうか。まずは有酸素運動について簡潔に説明しましょう。
有酸素運動とは、軽度から中程度の負荷をかけ、酸素を取り込みながらある程度の時間を継続して行う運動のことです。サイクリングのほか、ウォーキングやジョギングなど、比較的、運動強度は低いものの、継続して筋肉にかかり続ける運動といえます。
有酸素運動を行うと、エネルギー源として体脂肪が使われやすく、内臓脂肪の減少に役立つとされています。内臓脂肪からはアディポサイトカインという炎症物質が分泌されており、脂肪の蓄積量が多くなるにつれ分泌に異常をきたしてしまいます。結果として、高血糖や高血圧、脂質異常、動脈硬化といった、いわゆる生活習慣病の発症や進行のリスクが高まります。逆にいえば、内臓脂肪を減らせれば、生活習慣病の予防や改善につながります。
有酸素運動のなかでもサイクリングがおすすめされるのは、自転車の構造にあります。体重をサドル・ハンドル・ペダルの3箇所に分散するため、ウォーキングやジョギングと比べて膝や腰への負担が少ないのです。
肥満予防・ダイエット効果

体内の糖や脂肪の分解は、運動の強度と時間に関係しているといいます。以前は、激しい運動を長時間行うのが効果的とされていましたが、近年になり、それでは逆に脂肪が燃焼しにくくなることがわかってきました。脂肪を燃焼させやすいのは、中強度の運動。つまり、有酸素運動が効果的とされています。足腰に大きな負担がかからない強度で、長時間行えるサイクリングは、肥満防止やダイエットにうってつけの運動といえます。
下半身の筋力アップ
自転車のペダリング運動は、太ももやふくらはぎなど下半身の筋力強化に非常に効果的です。4,000mレースを模した5分間のサイクリングを、週に3回×12週間続けた実験では、大腿部の筋肉やペダルを踏み込む力が増加するなどの効果が見られたといいます。
筋力や筋肉量は、加齢とともに減少します。いわゆる「サルコペニア」という現象で、それが進むと介護が必要な状態になりやすくなるといわれています。下半身の筋力アップが期待できるサイクリングは、サルコペニアの予防に役立つ運動といえるでしょう。
メンタルヘルスの改善
サイクリングは、心の健康にも役立つことがわかっています。たとえば、24インチの自転車で1時間ほど、速度を変えて走る実験を行ったところ、どの速度で走った後も「快適な感情」が有意に増加することがわかったそうです。また、サイクリングは、ジョギングやスイミングなどよりも長時間運動できて、長距離を移動できるため、「達成感」が得られやすいといいます。脳にも刺激を与えるため、頭をスッキリさせる効果もあるそうです。
夏場のサイクリングで気をつけたいこと
夏場のサイクリングは、熱中症対策が必須です。次の4点に気をつけて、楽しみましょう。
気温の高い時間帯は避ける

夏場のサイクリングは、なんといっても走る時間帯を選ぶことが重要です。気温が高すぎる12時から16時、夕立が起こりやすい16時から19時は避けるようにしましょう。おすすめの時間帯は、まだ気温が上がりきっていない早朝や日が暮れて気温が落ち着く夜間です。夜間に走る「ナイトライド」では、自転車の前後ともに必ず明るいライトを使用して、車には十分気をつけなければなりません。
※近年は、夜間でも気温が下がらないことがあるので、くれぐれも熱中症には気をつけてください。
通気性のよい服を着る
服装にも一工夫を。熱中症は、日差しの強さや気温の高さだけでなく、湿度の高さもリスク要因になります。通気性のよい服は、熱や湿気がこもりにくいため、熱中症対策に効果的です。また、吸湿速乾性のある素材を選べば、汗をかいてもサラッと快適に過ごせるので、多くの自転車愛好家に支持されています。
水分補給・塩分補給
こまめな水分補給・塩分補給も意識しなければなりません。運動する前にもしっかり水分をとり、走行中もこまめに補給すること。喉が渇いてから飲むのでは遅いので、意識して摂取するようにしましょう。運動後の水分補給もお忘れなく。
汗をかくと水分だけでなく塩分も失われるため、水分と一緒に塩分も補給することが重要です。コンビニでも手に入りやすい塩分タブレットなどを活用するといいでしょう。
休憩をとる
適宜、休憩をとることも大切なポイントです。夏場のサイクリングは、とにかく無理は禁物。体調に異変を感じてからでは遅いので、意識して休憩をとるように心がけ、体をクールダウンさせましょう。
暑熱順化にサイクリングを取り入れる際のポイント

サイクリングは、暑熱順化に有効な手段です。暑熱順化とは、「体を暑さに慣れさせること」をいい、本格的に暑くなる前から始めることで、夏本番を迎えても熱中症になりにくくなるといわれています。
暑熱順化のポイントは、ズバリ「汗をかくこと」。汗は、体温を調節する役割を担っており、体にこもった熱を放出してくれます。うまく汗をかけないと、体に熱がこもり、熱中症のリスクが高まるのです。
暑熱順化は、いわば汗をかけるようにするトレーニングでもあります。その効果的な方法が、運動や入浴(湯船につかる)です。サイクリングは、暑熱順化に効果的なだけでなく、通勤や買い物など日常生活に取り入れやすい運動のひとつ。ぜひ、試してみませんか?
運動の目安は、「1回30分を週3回程度」です。ただし、絶対に無理はしないこと。くれぐれも熱中症には気をつけてください。暑熱順化には、数日から2週間ほどかかるといわれています。本格的な暑さがやってくる前に、余裕をもって始めましょう。
熱中症対策を取り入れて、夏場でサイクリングを楽しもう
サイクリングには、さまざまな健康効果があります。生活習慣病の予防や筋力アップといった長期的な効果はもとより、本格的な暑さを乗り切るためのカギとなる「暑熱順化」にも適しています。サイクリングに興味はありつつ、なかなか踏み出せないでいた人は、暑熱順化を目的に始めてみるのもいいかもしれません。ただ、春先でも急激な気温上昇に見舞われるようになった昨今、熱中症対策はしっかり施すこと。夏でも無理なく楽しめる運動として、サイクリングを始めてみませんか?

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