花火の来た道〜美しさの原点をたどる〜

夏の夜空を彩る花火。日本の夏を代表する風物詩であり、世界に誇る芸術品です。そのため、花火は日本生まれだと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、花火のルーツは意外な国にありました。今回は、花火についてのお話です。どのように進化して、いまのような美しい姿になったのかを見ていきましょう!

火薬の発明から「見る花火」へと発展するまで

ここでは、花火の歴史を「起源編」と「発展編」の2つの視点から見ていきましょう。

火薬は偶然の産物だった?〜花火の歴史「起源編」〜

花火の起源は諸説あるものの、有力な説とされているのが、古代中国で使われていた「のろし」です。のろしは、草や木などを燃やし、煙を出すことで、遠方の相手に合図を送る情報伝達手段として使用されていました。古くは、主に戦いの場で利用されており、秦の始皇帝は北方からの侵略に備え、万里の長城の要所要所にのろしを上げるための烽火台を設けたそう。その後、はっきりとした年代までは明らかになっていませんが、始皇帝の命により不老長寿の薬を作ろうとしていた錬丹術師が、その過程で偶然発明したのが「黒色火薬」だった­——というのが火薬誕生の通説となっています。黒色火薬は次第に爆発力を増していき、やがて武器として使われるように。13世紀に入ると、当時勢力を伸ばしていたモンゴル帝国やオスマン帝国を経て、ヨーロッパまで伝わったといわれています。

武器からハレの日の演出用へ〜花火の歴史「発展編」〜

戦いの場で重要な役割を果たしていた火薬ですが、ヨーロッパへ伝わると、祝砲に使われるなど、おめでたい場にも登場するようになります。そこから花火へとつながる経緯は明らかになっていませんが、現在のような「見て楽しむ花火」を史料上で確認できるのは14世紀後半になってからイタリアのフィレンツェで打ち上げられた祝祭の花火が、最初といわれています。その当時、イタリアはヨーロッパにおける花火の主産地で、火薬や花火製造が盛んに行われていたのだとか。イタリア国内で評判となった観賞用花火は、瞬く間にヨーロッパ中へ広がり、王侯貴族が好んで用いるようになります。戴冠式や結婚式、誕生日など、ハレの日には欠かせないものになった花火。各々の地でさらなる発展を遂げていくのです。

日本で独自の進化を遂げた花火

ここからは、日本の花火の歴史をたどっていきましょう。世界一と称される美しさの理由についても解説します。

鎮魂の意味が込められている花火

日本の花火の歴史は、1543年、種子島に鉄砲と火薬が伝来したことに始まるといわれています。世界の国々と同様に、日本でも伝来当初からもっぱら戦いの場で使われていた火薬ですが、江戸時代に入り安泰の世になると、平和的に利用されるようになります。そのきっかけになったと考えられる出来事が、徳川家康の花火見物。駿府城で明(中国)の商人が披露した花火を家康が見物したという記録が残っています。そのとき見た花火は、竹筒から火花が吹き出すタイプのもので、その技術を徳川の鉄砲隊が三河(徳川発祥の地)に持ち帰ったそう。そこから日本の花火は発展していき、手筒花火はいまも三河地方の伝統的な花火として名を馳せています。ちなみに、日本で最初に花火を見たとされる人物も、長らく家康といわれていたのですが、さまざまな史料から、大友宗麟や伊達政宗という説も浮上しています。いずれにしても、花火を披露したのは宣教師や唐人といった外国人でした。

打ち上げ花火のはじまりは、享保18年の両国(隅田川)の川開きと伝えられています。その前年、西日本一帯では冷夏と虫害による大飢饉が発生。多くの命が失われました。世にいう享保の大飢饉です。その飢饉で犠牲になった人々を弔い、悪霊退散を祈願するために、時の将軍・徳川吉宗は川開きの日に「龍神祭」を開催。花火も打ち上げられました。それを機に打ち上げ花火は川開きの定番になっていきます。日本では暑い時期、とりわけお盆のころに集中して花火大会が催されますが、花火にはいまも鎮魂の意味が込められているからなのです。

これぞ職人技!世界で賞賛される日本の花火の大きな特徴

火薬とともに世界中へ広がり発展していった花火ですが、中でも日本では独自の進化を遂げたといわれています。日本の花火と海外の花火は、まず「花火玉」のカタチからして違います。海外のものは円筒形、日本は球形です。円筒形の花火玉は上空へ上がると柳の枝のようにダラリと垂れて中の細工物が飛び散る格好になりますが、球形の花火玉は花のようにまん丸く大きく均一に広がります。それが日本の花火の大きな特徴であり、どの角度から見ても美しいと称賛される理由です。色の変化を楽しめるのも、日本の花火ならではといわれています。

花火鑑賞がより楽しくなる!花火が持つ3つの基本

ここからは、花火の「大きさ」「形」「色」から見る特徴をご紹介。花火の基本を知ると、花火鑑賞がより楽しくなるはず!

①【花火の大きさ】大きい花火ほど高く上がる!

花火玉のサイズは号数で表すのですが、玉の大きさと開いたときの大きさがどのくらいなのかを以下にまとめました。

<日本国内で見られる主な花火の号数と大きさ>

      (玉の直径、重さ) (開花直径、到達高度)

・3号=3寸 ( 9cm、0.2kg)  60m、120m
・4号=4寸 (12cm、0.5kg)       130m、160m
・5号=5寸 (15cm、1.3kg)       170m、190m
・7号=7寸 (21cm、3.0kg)      240m、250m
・8号=8寸 (24cm、4.8kg)      280m、280m
・10号=1尺(30cm、8.5kg)       320m、330m
・20号=2尺(60cm、70kg)    480m、500m
・30号=3尺(90cm、280kg)    550m、600m
・40号=4尺(120cm、400kg)   700m、700m

  • 10号の次は、20号、30号、40号と続きます。
  • [参考]東京タワーの高さ:333m、スカイツリーの高さ:634m

花火大会でよく打ち上げられるのは、8〜10号サイズ。今のところ、40号(4尺玉)が最大のサイズといわれています。ちなみに、40号サイズが打ち上がる速度は新幹線の最高速度よりも速いのだとか!

② 【花火の形】形いろいろ打ち上げ花火

花火は、大きく「割物」「小割物」「ポカ物」の3つに分けられます。

  • 割物(わりもの)
    割物とは、四方八方に飛ばす仕組みの花火で、丸く広がる菊や牡丹が代表的。菊と牡丹は、おそらく多くの人が花火をイメージするときに思い浮かべる形ではないでしょうか。ハートや星の形をした「型物」も割物に含まれます。
  • 小割物(こわりもの)
    上述した割物の花火玉の中に、いくつもの花火玉が入っていて、小さな花火が同時に開きます。千輪菊や椰子が有名。
  • ポカ物
    花火玉がくす玉のようにポカっと割れるタイプのもので、柳が代表的です。柳は誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

花火大会のフィナーレを飾ることが多い「スターマイン」は、たくさんの花火を同時に、もしくは連続して打ち上げる方法のことで、「仕掛け花火」に分類されます。「ナイアガラ」も代表的な仕掛け花火です。

③【花火の色】花火は4色で作られている!

色鮮やかで何色も使われているように見える花火ですが、じつは赤・青・緑・黄のたった4色が基本になっています。そもそもなぜ花火に色をつけることができるのでしょうか? それは、火薬に混ぜられている炎色剤と呼ばれる金属化合物が、特有の色を発して燃えるから。炎色反応という化学反応を利用しているのです。以下に、基本の4色を発する金属化合物を紹介します。

<基本の4色を作る化合物の種類>

赤:ストロンチウム化合物
青:銅化合物
緑:バリウム化合物
黄:ナトリウム化合物

ほかにも紫やピンクといった色を出す金属はありますが、取り扱いのしやすさなどから、基本の4色が使われることが多いようです。といっても、この4色を組み合わせることでいろいろな色が出せるといいます。なので、実際は4種類以上の色を目にしているのかもしれません。

花火の歴史を知って、味わい深く鑑賞する

世界一と称される精巧で美しい日本の花火。夏を代表する風物詩でもあります。そのため、花火は日本生まれだと思われがちなのですが、意外にも発祥の地ではありません。遥か昔、火薬が世界を巡り、たどり着いた各々の地で花火として発展。中でも日本では独自の進化を遂げたといわれています。その背景には、日本人ならではの美意識や繊細さ、そして細やかな技術がありました。その伝統は今なお息づき、世界を魅了しています。花火がたどって来た道を知ると、より味わい深く鑑賞できるのではないでしょうか。

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