【暑熱順化の基礎知識】暑さに負けない体づくりを始めましょう!

気温が大きく変動しやすい季節の変わり目。近年はその程度が激しく、2025年の春も、夏日から一転して冬日になるなど、ジェットコースターのような日々が続きました。4月後半には真夏日を記録する地点も出始め、気温は平年より高めで推移しています。長期予報によると、2025年の夏は猛暑になるとのこと。予想が外れることを願いつつ、猛暑に備えて体の準備だけはしておきましょう。今回は、暑さに負けない秘訣「暑熱順化」についてのお話しです。

熱中症のリスクを減らす「暑熱順化」

ここでは、「暑熱順化」の定義と効果、熱中症が発生するメカニズムについて解説していきます。

「暑熱順化」とは?

暑熱順化とは、「体が暑さに慣れること」をいいます。気温の高い日が続くと、自然と暑熱順化は進んでいくものですが、季節はずれの突発的な高温に見舞われることが少なくない昨今、徐々に暑さに慣れるのは至難のわざです。なので、意識的に暑熱順化を行う必要があるのです。

暑熱順化の効果

暑熱順化が進むと、体には次のような変化が起こり、暑さに強くなるといわれています。

  • 発汗量が増える
  • 汗に含まれる塩分濃度(=ナトリウム濃度)が低下する
  • 皮膚血管が拡張する(=皮膚の血流量が増える)
  • 循環血液量が増える

では、なぜ上記4つの変化が起こると、暑さに強い体がつくれるのでしょうか?

①の「発汗量が増える」は、気化熱(※1)が関係しています。汗をかくと、蒸発するときに皮膚の表面から熱が奪われるため、体温の上昇を防ぐことができます。

②の「汗に含まれる塩分濃度が低下する」は、いわゆる「良い汗」がかけるようになるということ。良い汗とは、体内のろ過機能が正常に働いているときに出る汗のことで、ミネラルバランスが調整されている状態です。ろ過機能が正常であれば、水分だけが汗として排出され、体に必要なナトリウムなどのミネラルは血管に戻されます。つまり、体内のミネラルが大量に失われることがありません。ミネラル不足は、痙攣や意識障害など熱中症特有の症状を引き起こす原因になり得ます。良い汗をかければ、そのリスクを減らすことができるのです。ちなみに、「悪い汗」はミネラル分を多く含むため、ベタベタしています。良い汗はほぼ水分なので、サラサラして蒸発しやすく、体温を効率的に下げられる一方、悪い汗は蒸発しにくいため、体温調節の面でも非効率的です。

③の「皮膚血管が拡張する」と④の「循環血液量が増える」は、熱放散が関係しています。皮膚の血流量や循環血流量が増えると、体にこもった熱を体外へ放散しやすくなるからです。熱くなった体内の血液を体の表面に集めて、皮膚から放熱して冷やそうとする働きは、さながら車のラジエーター(※2)のようで、しばしば例えとして使われます。

このように、暑熱順化をすることで、暑さに強く、熱中症に負けない体を手に入れることができるのです。

※1 気化熱:液体から気体になるときに周囲から吸収する熱のこと。
※2 ラジエーター:自動車エンジンなどの冷却装置。

そもそも、熱中症とは? 〜熱中症が発生するメカニズム〜

熱中症が引き起こされるメカニズムについても見ておきましょう。

たとえば、運動して体を動かすと、体内で熱がつくられ、体温が上昇します。すると、平常時であれば、汗をかくことで「気化熱」を放出したり、皮膚からの「熱放散」によって、体温を36℃から37℃くらいに保つことができます。ところが、高温多湿の環境下で激しい運動などを行うと、体温調節がうまくできなくなり、体の中に熱がこもって体温が上昇。さらに、汗をかくことで体から水分や塩分が失われ、熱中症が引き起こされます。

<覚えておきたい熱中症の初期症状>

⚫️めまい
⚫️立ちくらみ
⚫️一時的な失神

これらの症状が出ても意識がしっかりしているときは、クーラーの効いた室内や涼しい日陰で休ませ、体を冷やし、水分補給をします。多くの場合は早い対処で改善するといわれていますが、症状が改善しない場合は迷わず医療機関を受診することが肝心です。

「暑熱順化」の方法

ここからは、暑熱順化の具体的な方法を紹介していきます。取り入れやすいものから実践してみましょう。

ウォーキング

暑熱順化を考えたウォーキングの時間の目安は、1回30分ほど。週に5日程度行うのがいいそうです。仕事帰りに一駅分歩く、外出時には階段を利用するなど、普段の生活に取り入れやすい方法を見つけてみましょう。意識して「少し汗をかくこと」が大切です。

ジョギング

ジョギングの時間の目安は、1回15分ほど。「少し汗をかくこと」を意識して、週に5日程度行うといいでしょう。

サイクリング

サイクリングの時間の目安は、1回30分ほど。週に3日程度が望ましいとされています。通勤や買い物など日常生活に取り入れやすいので、おすすめです。

ストレッチ

屋内で行う軽いストレッチは、1回30分ほど。週に5日程度、もしくは毎日行ってもOKです。ただ、屋内とはいえ、部屋の温度には注意すること。少し汗ばむ程度でいいので、高温多湿となるような場所で行うのはやめましょう。

入浴

入浴も大変効果のある方法です。シャワーだけで済まさずに、湯船に浸かるようにしましょう。40℃くらいのぬるめのお湯に10〜15分程度浸かることが推奨されています。ただし、無理は禁物です。体に負担がかかるようなら、浸かる時間は短縮してください。

暑熱順化のポイントと注意点

最後に、暑熱順化のポイントと注意点を紹介します。

暑熱順化のポイント

暑熱順化のポイントは下記のとおりです。

⚫️夏本番を迎える始めるのがベスト

熱中症のリスクが高まる夏本番を迎える前に、無理のない範囲で汗をかくことが大切なポイントになります。地域にもよりますが、暑熱順化を始めるのは5月に入ってからがベストです。具体的な目安として「暑熱順化前線」が日本気象協会より発表されているので、そちらを参考にしてみてください。

<暑熱順化前線>

⚫️余裕をもって始めること

暑熱順化は、およそ2週間で完了するといわれています。トレーニングを開始して3日くらいから効果が出始め、1週間ほどでほぼ順化した状態になるそうですが、個人差もあるため余裕をもって2週間前から始めることをおすすめします。

暑熱順化の注意点

暑熱順化は一度完了したからOKというわけではありません。数日休むとせっかくの効果がゼロになってしまいます。無理のない範囲で、コツコツ続けることが大切です。また、運動する際には、水分や塩分を適宜摂取して、熱中症にも十分注意してください。熱中症にならないためにも行う暑熱順化ですから、熱中症対策は万全に!

これからの季節が「暑熱順化」を始めるベストタイミング!

厳しい暑さに見舞われることが当たり前になってしまった日本の夏。長期予報によると、今年の夏も猛暑となるようです。あくまで予想なので、外れることを期待したいところですが、近年の異常な気象状況を鑑みると、そうもいっていられません。今から「暑熱順化」を始めて熱中症に負けない体をつくっておきましょう。暑熱順化の方法は意外ととっつきやすいものが多いです。たとえば、入浴の際にしっかり湯船に浸かること。シャワーだけでなく湯船につかって適度に汗をかくことは、じつは立派な暑熱順化です。今日からでも始めてみませんか?

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