焚き火に癒される秋〜人はなぜ焚き火に魅了されるのか?〜

秋も深まり、落ち葉を掃除しているうちに、焚き火を楽しみたいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、焚き火といえば、キャンプの主役ともいえる存在。いずれにしても、自然の中で楽しむものというイメージがありますが、昨今は焚き火をテーマにした飲食店も見られるようになりました。規制はあるものの、都会の真ん中でも気軽に焚き火を楽しめるとなれば、興味を持つ方も人は多いかもしれません。では、なぜ人は、焚き火に惹きつけられるのか? 今回は、焚き火の魅力を掘り下げます。

太古の昔から「火」とともにあった人類

焚き火の魅力に迫る前に、まずは火と人類の歴史を見ていきましょう。

人類が火を使うようになったのはいつごろ?

人類が火を使い始めた年代は、まだ詳しくはわかっていないそうです。最初に手にした火が、自然火災によってもたらされたものだと考えられてはいるようですが、それが落雷によって引き起こされたのか、山火事が発生したからなのか、はたまた火山の噴火によるものだったのか、といった背景的なことも明らかではありません。なので、人類はいつ・どのような状況で火と出会ったのかは想像の域を出ませんが、遥か昔から暮らしの中に火を取り入れていたことを示唆する「痕跡」は見つかっています。その痕跡というのが、中国の周口店(しゅうこうてん)にある北京原人の遺跡。炉や焼けた土、骨、石などが発見されており、北京原人が日常的に火を使っていたことをうかがわせるといいます。このことから、北京原人が存在していたおよそ50万年前には、すでに人類は火を手中に収めていたと推測されています。当初は、自然火災によってもたらされた火ですが、人類はやがて「発火」という術を身につけていきます。

火が与えてくれたもの

人類は火を手に入れたことで「明るさ(光)」と「暖かさ(熱)」を享受しました。闇夜を照らし、身体を暖めてくれる火が傍らにあるというのは、どんなに心強かったことでしょう。さらに、火は次のような恩恵ももたらしてくれました。

危険な獣から身を守ってくれる

日常的に火を使っていたとされる北京原人がいたのは、マンモスなどの大型動物が跋扈(ばっこ)していたような時代。襲われる危険性もあったでしょう。動物たちは概して火を恐れることから、火を焚くことで身を守ることもできたのではないかと考えられています。

食材の幅が広がった

火を手に入れる前は、生ものしか食べられなかった人類。「火で炙る」ことができるようになると、それまで口にすることができなかったものが食べられるようになり、食材の幅がグンと広がりました。

火をうまく活用しながら進化を遂げる

火でさまざまなものが炙れるようになると、口にできるものが格段に増え、カロリー摂取量も増大します。すると、脳が発達。脳が発達すると、次のような好循環が生まれていきます。

食材だけでなく土器も焼けるようになる

土器を使って煮物が作れるようになる

煮ると食材がやわらかくなるため、消化がよくなる

消化がよくなると、栄養素をより摂取しやすくなり、脳がさらに発達。寿命も延びる

生活に余裕が出てくる↓文化的な活動を行えるようになる

陶器や青銅、鉄なども火によって生み出されました。名だたる芸術品も火があったからこそ誕生したといっても過言ではないでしょう。火は、古代から現代に至るまで、文明を支えているのです。

焚き火から得られるさまざまな効果

焚き火にはさまざまな効果があるといわれていますが、ここでは大きく3つに分けて解説していきます。

癒し効果

炎は、「1/fゆらぎ」と呼ばれるリズムを刻んでいます。1/fゆらぎというのは、小川のせせらぎやそよ風など自然界にあふれる不規則でランダムなリズムのこと。それらに触れるとき、人間の脳はα波を出してリラックス状態になるといわれています。

コミュニケーション効果

焚き火をしていると、炎を見つめながら話す格好になるため、自然体でコミュニケーションがとれるといわれています。人間は中心に「何か」があると落ち着くそうで、焚き火はまさにその「何か」たる存在といえるのです。また、焚き火をしているときは面と向かって話すのとは違い、沈黙しても気まずくなく、苦痛に感じないことも自然体でいられる秘訣のようです。

瞑想効果

瞑想するときは、覚醒しているのにボーッとした状態を意図的につくります。焚き火をボーッと見つめているときは、瞑想と非常によく似た状態になるのだそうです。

【初心者向け】焚き火をするために知っておきたいこと

ここでは、焚き火をするために最低限覚えておきたい知識として、「焚き火ができる場所」と「焚き火に必要な道具」の2点について解説します。

焚き火ができる場所

焚き火をする場所には多くの制約があります。どんな場所ならOKなのかを具体的に見ていきましょう。

キャンプ場

法的な規制を気にせずに焚き火をするのであれば、やはりキャンプ場になります。ただ、最近は直火を禁止しているキャンプ場がほとんどなので、焚き火台は必須になるかもしれません。ちなみに、直火とは、地面の上に直接薪を組んで焚き火をすること。近年、環境への配慮や利用者のマナーの悪さなどから(※1)、直火NGのサイトが増えています。直火で考えている場合は、事前に確認するようにしましょう。

※1
*環境への配慮:地面や芝、草を痛めてしまう恐れがあるため。
*利用者のマナーの悪さ:余った薪や燃えかすを放置したままにするなど。

公園のバーベキュー場

焚き火をする主たる目的がバーベキューであれば、公園に設けられているバーベキュー場がおすすめです。ただし、大規模な公園でもバーベキュー施設は設けていないこともあるため、事前確認はするようにしましょう。

河原

バーベキューというと河原でやるイメージがありますが、意外と難易度が高い場所です。まずは、その土地の所有者が誰なのかを確認しなければなりません。確認後は、きちんと許可をとって利用すること。

自宅の庭

自分の家なのだから、何をしても大丈夫と思っている人は少なくありませんが、自宅の庭は焚き火をするうえではいちばんハードルが高い場所かもしれません。というのも、焚き火で発生する煙やニオイが原因で近隣問題に発展することがあるからです。そもそも、自治体の条例で禁止されている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

焚き火をするのに最低限必要なアイテム8つ

焚き火をするのに最低限揃えておきたいのが、次の8つのアイテムです。選ぶ際のポイントやちょっとした情報とともに紹介します。

  1. 焚き火台
    軽量&コンパクトなソロ用焚き火台も続々登場しています。
  2. 焚き火シート
    近年、耐熱性の高いシートを焚き火台の下に敷くのがスタンダード化しています。焚き火シートを必須にしているキャンプ場もあるほどです。
  3. 火ばさみ(トング)
    火の中心部まで届く長めのタイプがおすすめです。
  4. 焚き付け
    市販の着火剤のほか、ヤニを多く含んで燃えやすい松ぼっくりもあると便利です。
  5. ライター
    風に強いターボ式ライターが重宝します。
  6. 鉈(なた)
    太い薪を細く切ったりするときに便利。刃が長方形の「腰鉈」は初心者でも使いやすいといわれています。
  7. 耐熱グローブ
    やけどを防ぐためにもグローブは必須です。
  8. 火吹き棒
    これがあると火起こしがとってもラク。100円均一ショップでも扱っているところがあります。

焚き火を囲みながら、ゆったりとした上質な時間を過ごす

火を見ると落ち着くのは、「1/fゆらぎ」が関係していることはわかっていますが、現状はまだまだ科学的に解明されていないことの方が多いようです。けれど、確かに感じる焚き火の心地よさ。人類が火とともに歩んできた悠久の歴史に思いを馳せると、「火=安心感」というメッセージが遺伝子に刻み込まれているのではないかという気がしてきます。理屈を考えるよりも感じること。火を前にすると、自然とそんな気持ちになるのは自然の摂理なのかもしれません。とかく頭で考えがちで、忙しない現代。焚き火を囲んで心を解放し、ゆったりとした時間を過ごしてみませんか。

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