暮らしのなかのあかり〜照明と自然光を上手に使いわける〜

一年の中でも、ワクワク感が高まる春は、日々の生活を見直す良い機会です。春を迎え、太陽の光のあたたかさとありがたさを感じるこの時期に、暮らしのなかのあかりについて考えてみましょう。サスティビリティな毎日を目指すなかで、節電を考えるよい機会にもなるはずです。

暮らしのなかの照明と自然光

暮らしのなかのあかりといえば、室内外に設置する照明がすぐに思い浮かびます。しかし、太陽や月の光もまた暮らしには欠かせません。ここでは、照明と自然光の違い、さらに家庭でできる節電について見ていきます。

照明と自然光の違い

照明のような人工的な光源から発せられる光を「人工光」、太陽や月を光源とする光を「自然光」といいます。人のつくりだした光と、自然の光には、どのような違いがあるのでしょうか。

ところで、光とは電磁波の一種であり、波長の長さによって色が異なります。波長の長い赤外線と波長の短い紫外線の間にある光が、人の目に見える可視光線であり、私たちは紫・藍・青・緑・黄・橙・赤などの色として感じているわけです。

自然光には、可視光線だけではなく、あらゆる波長の光が含まれています。そして、光の明るさや色は一日のなかで変化します。なるほど、日の出や日の入りの太陽は赤っぽく、真昼の日差しは白っぽく見えるわけです。

一方、人工光は可視光線だけを組み合わせてつくられています。たとえば、蛍光灯の昼白色(ちゅうはくしょく)は昼の太陽光に似せた色です。自然の明るさなので、長い時間を過ごすリビングや料理をするキッチン、メイクをする洗面所などの照明に向いているといわれます。また、電球色は、その名のごとく電球のような夕焼け色です。リラックスしたい寝室やリビング、浴室などの照明としてよく使われます。人工光は、自然光とは違って明るさや色は変化しません。ただ、近年は明るさや色が調整できるLEDライトもあり、より自然光に近づいています。

照明と自然光でできる節電

日頃から節電を心がけている人は多いでしょう。「省エネタイプの照明器具を使用する」、「照明はこまめに消す」、「照明器具はこまめに掃除する」といった対策を習慣づけることは重要です。とはいえ、それだけでは味気なく感じるかもしれません。

そこで、照明だけではなく採光という観点からも、節電を考えてみましょう。つまり、室内のあかりを照明だけに頼らず、積極的に自然光をとりいれる方法です。たとえば、晴れた日には、太陽の明かりを取り入れるためにカーテンやブラインドを全開にするといったシンプルな方法でかまいません。部屋の奥まで日差しが入りこむだけで、室内が明るく感じられ、照明を消そうと思えるはずです。

あるいは、夜明け前や夕暮れの薄明かりや夜の闇を楽しむのもいいですね。刻一刻と移ろう自然光の変化を味わいながら、少しずつ照明をつけていく時間です。小さなお子さんや高齢の家族がいる家庭では難しいこともあるかもしれません。しかし、暗さを避けて、部屋全体を均一に明るくするのではなく、必要な場所を照明で照らし、陰影を楽しむというスローライフを送るのもよいものです。

起きてから寝るまでのあかり

では、朝起きてから夜寝るまでのあかり事情と、照明と自然光の使いわけを見ていきましょう。

朝のあかり

朝、太陽の光を浴びて体内時計をリセットすると、その日の夜は、ぐっすりと眠れる——そんな話題を目にすることがあるかもしれません。確かに、まだやわらかな朝の日差しで目覚めたり、窓を開けてさわやかな太陽の光をとりこんだりすると心地よいものです。

晴れやかに一日をスタートさせるためにも、朝は、なるべく照明をつけずに自然光の中で過ごしたいところ。太陽の光が差し込むダイニング、あるいはリビングの窓辺で朝ごはんを食べれば、ちょっとしたピクニック気分、オープンカフェ気分を味わえそうです。もし調理のときに暗いと感じるようなら、手元灯を使うと作業に支障がありません。

昼のあかり

日差しが強くなる昼は、照明をオフにするのにぴったりの時間帯です。思いきってカーテンやブラインドを開け、できるだけ太陽の光をとりこんでみましょう。日差しが強すぎるときは、レースやオーガンジーのカーテンなどで光を調整してくださいね。逆に、窓の位置や天気によっては、自然光のあまり入らない場所もあるかもしれません。状況に合わせて、手元を明るく照らすテーブルスタンドやペンダントライト、スポットライトをつけるようにします。また、子どもたちが自室やリビングで勉強するときも、手元に暗がりができないように、デスクとあかりの位置に気をつけてあげましょう。

夕暮れのあかり

夕暮れどきは、空の色がめまぐるしく変化します。茜色の夕焼けのあと、日がすっかり沈み、空が紫と濃い青色に染まっていく時間を「ブルーアワー」といい、夜の帳が下りるまでのわずかな時間、幻想的な光景が広がります。薄暗さを感じて、つい照明のスイッチを入れたくなる時間ですが、少しだけ我慢して、自然光の美しさを味わってみてはいかがでしょうか。

それから、夜ごはんのしたくをするキッチン、家族を出迎える玄関、家族の集うリビングなど、必要なところから照明をつけていきます。このときにおすすめしたいのが「多灯分散照明」。これは、1つの部屋に1つの照明を設置する「一室一灯照明」に対して、1つの部屋に複数の照明器具を配置して必要なところだけを照らすというもの。たとえば、リビングの主照明がシーリングライトだとしたら、補助照明として、ソファのそばにスタンドライトを配したり、センターテーブルの上にテーブルスタンドを置いたり、テレビのうしろにライトを忍ばせたりするわけです。必要なあかりだけをつければ、節電になりますし、複数の照明を組み合わせれば、室内に明暗ができるため、ニュアンスのある雰囲気をつくれます。

夜のあかり

日の出とともに起きて、日の入りとともに寝る生活ならともかく、現代では夜のあかりは欠かせません。夜を過ごす私たちにとって照明はありがたいものではありますが、明るくしすぎも考えもの。というのも、昼の太陽と同じような強い光のなかにいると、リラックスできないからです。

一日の終わりにくつろぐためにも、夜は、あたたかみのある電球色のあかりを灯すとよいでしょう。たとえば、食事のときなら、ペンダントライトやスポットライト、あるいはキャンドルで食卓を照らします。料理がよりいっそう美味しそうに見えるうえに、まるでレストランのような雰囲気が楽しめます。また、バスタイムには、キャンドルを使うのもおすすめ。炎のもつ1/fゆらぎにはリラックス効果があるといわれ、疲れを癒すにはぴったりです。寝るまでの時間は、照明の明るさを落とし、ときには月光や星あかりを楽しみましょう。寝室は、部屋全体を明るくせず、ベッドサイドのスタンドライトでほんのりと照らせば、きっと心地よい眠りにつけるはずです。

一日のなかで照明と自然光を上手に使いわける

人々が太陽の動きに合わせて暮らしていた時代とは異なり、現代は照明の利用が欠かせません。それでも、健やかな太陽の光ややわらかな月の光は心地よく、心が和むものです。朝から昼は、室内にたっぷりと自然光をとりこみ、夕暮れから夜は、必要なところに必要なだけのあかりを灯しましょう。照明と自然光を上手に使い分ければ、節電になるだけではなく、心身ともに穏やかに過ごせますよ。

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