暮らしのなかで、ナチュラルに涼しくなる方法

本格的な夏がやってきました。近年は暑さがどんどん厳しくなり、2007年には、最高気温が35℃以上の日は「猛暑日」と定義されたほど。猛暑日まで行かなくても、いまや気温30℃を超える日が続く地域も珍しくありません。

うだるような暑さや熱中症から逃れるためにも、ついエアコンの設定温度を低くしてしまいがち。でも、体の冷やしすぎは体調不良を招くおそれがあり、冷房の使いすぎは電気代も環境負荷も大きくなってしまうのが難点です。そこで、伝統的な涼の取り方から、体にも環境にもやさしい涼しくなる方法を探ってみましょう。

涼しい住まい

むしむしと暑い日本の夏。涼しく快適に過ごせるように、昔から住まいにはあちこちに工夫が凝らされてきました。「風」と「日差し」の観点から見てみましょう。

風の通り道をつくる

涼しい住まいには、風が通る工夫があります。例えば、開け放せる引き戸や襖、天井と鴨居の間にある欄間など。室内の通気を考えて設計される建具です。視線を遮りながら、風を通す格子戸もすてきですね。京都の町家にはおなじみの様式ですが、洋室との相性もよく、最近の住宅にも取り入れられています。網戸も優れた設計で、虫の侵入を防ぎながら、風を通します。

風を家のなかへ取り込むのは、窓。掃き出し窓・天窓・高窓・地窓とさまざまなタイプがありますが、空気の性質上、高い位置の窓は熱い空気を外に出し、低い位置の窓は冷気を導きやすいとされています。

また、庭にも涼しくする工夫が見られます。そのひとつが、芝生です。見た目に美しいだけではなく、照り返しを防ぐ効果があります。さらに、植物には葉から水蒸気を発する作用があり、まわりの空気を冷やします。風の通り道となる窓の下に芝生を植えると、涼しい風を室内に取り込めます。

日差しを遮る

夏の強すぎる日差しをシャットアウトするのも涼しい住まいづくりの工夫の1つ。例えば、軒や庇(ひさし)があります。これらは、外壁や窓、ドアを風雨から守るだけではなく、夏は陽光が室内に入り込むのを防ぎます。同じく日除けの役割を担っているのが、窓やバルコニーに設置するルーバー、すだれやカーテンです。

近ごろ注目されているのが、「緑のカーテン」。窓を覆うように蔓性の植物を育てて、日差しを遮ろうというもの。芝生と同じく、空気をひんやりとさせる効果も期待できます。古くからおなじみのアサガオやヘチマ、ヒョウタンのほか、ゴーヤやキュウリ、パッションフルーツなど食べられるタイプの植物も収穫という楽しみがあってよいですね。

涼しい風習

冷房機器がなかった時代から、先人たちはさまざまな工夫で涼を取っていました。いまこそ見習いたいエコでサスティナブルな風習を見てみましょう。

しつらい替えと夏座敷

「しつらい替え」とは、住まいの衣替えのこと。京都では「建具替え」「模様替え」ともいわれ、京町家には、襖や障子などの建具、調度品、敷物などを、夏と冬で替える風習が伝わっています。夏らしく涼しげになった座敷が「夏座敷」。季語であり、かの松尾芭蕉も〈山も庭も動き入るるや夏座敷〉という句を詠んでいます。それほどまでに、しつらい替えや夏座敷は、暮らしに根づいていたのでしょう。

この風習は、形を変えながら現代の暮らしにも息づいています。夏の衣替えの時期になると、カーテンやラグ、クッション、スリッパ、装飾なども、薄手の夏ものに替えませんか。それこそが、現代のしつらい替えです。

打ち水と行水

「打ち水」とは、庭や道に水をまくことであり、「行水」とは、たらいに張ったお湯や水で汗を流すことです。どちらも江戸時代から続く夏の風物詩でした。いまはほとんど見られませんが、涼しくなる効果は期待できそうです。

打ち水をすると、水が蒸発するときに地面の熱を奪います。そのため、地面の温度が下がり、涼しく感じられるというわけです。打ち水をするのに最適な時間帯は、比較的暑くない朝と夕方。太陽が照りつける日中は避けること。というのも、まいた水がすぐに蒸発してしまい、かえって蒸し暑くなることもあるそうです。

行水をすると、火照った体の熱がやさしく冷やされます。打ち水と同じように、体についた水滴が体温を奪いながら蒸発するため、涼しく感じられるのです。昔ながらの行水をするのは難しいかもしれませんが、シャワーなら簡単です。海やプールに体をならす要領で、冷たすぎない水やぬるま湯を手足の先から少しずつかけていきます。呼吸をするだけで汗だくになるような暑い日には、この現代版の行水で乗り切りましょう。

五感で涼しくなる5つの方法

エアコンや扇風機がなかった頃、人は五感をフルに使って涼を取っていました。その方法は、とてもエコでサスティナブル。先人たちの暮らしの知恵を紹介します。

①  味覚〜食で涼を取る〜

涼を感じる食べものといえば、かき氷。ひとさじ口にすると、体にこもった熱がすっと冷めていきます。トマトやキュウリ、スイカなど夏の野菜や果物を食べたときも、やはり体内から涼しくなる気がしませんか。

薬膳や東洋医学では、夏に採れる野菜や果物は体を冷やすともいいます。そのメカニズムは、科学的にまだ解明されていないようです。しかし、考えてみると、夏の野菜や果物はよく冷やして食べることが多い。それなら、かき氷と同様に涼しくなる効果が期待できるのもうなずけますね。

②  視覚〜色で体感温度を下げる〜

赤い色を見ると暑くなり、青い色を見ると涼しく感じる……それは、気のせいではなく、色の心理効果のひとつです。暖色と寒色では体感温度に3℃も差が出るという実験結果もあるのだとか。

こうした心理効果を使わない手はありません。しつらい替えのときは、暖色よりも、ブルー系の寒色を取り入れてみましょう。カーテンやラグ、クッションカバーなどのファブリックのほか、壁に飾る絵やポスターも寒色を選び、涼しげな色の生花や観葉植物などのグリーンを置くと、室内がひんやりと感じるはずです。

③聴覚〜音で涼しさを呼ぶ〜

見ると涼しくなる色があるように、聞くと涼しくなる音があります。その代表格は、やはり風鈴。チリンチリンと風に鳴る風鈴は、懐かしさとともに涼しさを運んできます。風鈴が鳴るということは、風が吹いているわけで、実際に涼しいはず。その風鈴と涼しい記憶が結びつき、音を聞くだけで涼しいと感じるようです。波や川の音のBGMでも、同じ効果が期待できるといいます。確かに、波音やせせらぎは、涼しい記憶と結びついていますね。

④触覚〜素材で涼を感じる〜

涼を感じる手触りも侮れません。夏服の生地に使われる麻、畳の素材であるい草などは、さらさらとした触り心地で、涼しさを感じます。とくに、い草は吸湿性が高く、湿気のこもりやすい寝具や枕にぴったりの素材です。夏の器に使いたいのは、ガラスや錫(すず)。見た目が涼しげなうえに、手触りがひんやりとして涼を感じさせてくれます。夏用のファブリックや食器を選ぶときは、素材に着目してみましょう。

⑤嗅覚〜香りで涼しくする〜

香りもまた涼を運んできます。数ある香りのなかでも、とりわけ涼感のあるペパーミント。あのさわやかな香りを嗅ぐだけで、体感温度が4℃も下がるという実験結果があります。さらに、ミント系の香りには不快感を軽減する効果もあるそうです。つまり、イライラするほど蒸し暑い日でも、ペパーミントの香りで、涼しく穏やかに過ごせるかもしれません。香りを上手に取り入れて、寝苦しい熱帯夜はもちろん、通勤の乗り物や職場でも心地よく過ごしましょう。

参照:アロマでクールダウン|AEAJ

五感に働きかけて、涼しく暮らす

近年の猛暑に対抗するためには、エアコンが欠かせません。とはいえ、つけっぱなしでは電気代が嵩みますし、体や地球環境への負荷も気がかりです。そこで役に立つのが、昔ながらの暑気払いの知恵。家のなかに日差しを取り込まず、風の通り道を確保しながら、五感をフルに使って涼を取ってみませんか。今日から、エコでサスティナブルな涼しい暮らしを。

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