風邪に負けないカラダをつくりましょう!〜知っておきたい免疫の基礎知識〜

2024年の秋頃には、すでに流行の兆しを見せていたインフルエンザ。2025年を迎えても全国的に感染者数は増え続けています(2025年1月時点)。新型コロナウイルスもまだまだ油断できない状況にありますし、「風邪は万病の元」といわれるように、風邪も決してあなどれるものではありません。そんなさまざまな感染症から身を守るカギとなるのが、「免疫」です。よく見聞きするわりに、漠然としたイメージしかわかない人もいるのではないでしょうか。今回は、免疫のイロハをやさしく解説します。
そもそも、「免疫」とは?

まずは、免疫とは何かについて見ていきましょう。
免疫は体に備わっている「防御システム」
免疫とは、ウイルスや細菌などの「異物」から体を守る仕組みのことです。その働きを担うのが「免疫細胞」と呼ばれる細胞群で、多種多様な細胞が互いに連携をとりながら、チームプレーで異物と戦います。異物とみなされるのは、外から侵入してきたウイルスや細菌などの病原体だけではありません。それらに感染した細胞や体の中で発生したガン細胞なども異物とみなされます。
免疫学では、この異物のことを「非自己」と呼んでいます。対して、自分の体を構成する細胞や組織のことは「自己」といいます。免疫細胞は、ウイルスの侵入やガン細胞の発生があると、まずはそれが自己なのか非自己なのかを識別します。非自己と認識すれば攻撃を開始して、異物を排除。この一連の働きを「免疫反応」といいます。免疫反応が強くなりすぎると、攻撃の矛先は自分自身へ向かいます。膠原病や関節リウマチといった「自己免疫疾患」、花粉症や喘息などの「アレルギー疾患」は免疫反応が過剰になっている状態なのです。
免疫についてもう少し深掘り!①【免疫寛容】〜
私たちの体には、免疫反応とは正反対の働きをする「免疫寛容」という仕組みも備わっています。つまり、非自己を異物とみなさず、受け入れて共存しようというのが免疫寛容です。たとえば、食べ物もそのひとつ。自己・非自己という視点でみれば、外から取り入れる食べ物は異物といえます。しかし、食べ物は、生命を維持するには必要不可欠なもの。そうした体に必要なものには外部から取り入れたものであっても攻撃せず、排除せずにいるのは、免疫寛容がうまく働いているからにほかなりません。この免疫寛容がうまく働かなくなったとき、自己免疫疾患が引き起こされると考えられています。
免疫のシステムは二段構え
免疫は、「自然免疫」と「獲得免疫」の大きく2種類があります。言い換えると、免疫は「二段構え」の体制なのです。ここでは免疫のシステムについて掘り下げていきます。
自然免疫とは

自然免疫は、生まれつき備わっている免疫システムです。異物と戦う最初の防衛ラインなのですが、じつはその前段にも「物理的・化学的防御」という防護壁が立ちはだかっています。まずは、そこから見ていきましょう。
- 物理的・化学的防御
物理的・化学的防御は、体の反射や殺菌物質の分泌などによって異物が体内に侵入するのを防ぐ仕組みです。活動の一部を、以下に紹介します。
- 咳やくしゃみで異物を排除する
- 唾液や涙、鼻水などに含まれるリゾチームという酵素によって殺菌する
- 皮膚にいる常在菌が病原体の定着を阻止する など
※物理的・化学的防御を自然免疫に含める場合もあります。
- 自然免疫
物理的・化学的防御では阻止できず、ウイルスや細菌などの異物が体内に入ると発動されるのが、自然免疫です。免疫細胞である「好中球」や「マクロファージ」が、細胞内に異物を取り込み、破壊します。この働きを「食作用」といいます。ざっくばらんにいえば、異物を食べてしまうので、好中球やマクロファージは「食細胞」とも呼ばれています。自然免疫で、もう一つ覚えておきたいのが、NK(ナチュラルキラー)細胞です。
※NK(ナチュラルキラー)細胞とは、すでに病原体に感染してしまった細胞や、体内で発生したガン細胞を直接攻撃し、排除します。常時、全身をくまなくパトロールして、病原体などから体を守っています。
獲得免疫とは
自然免疫で処理できなかったときに発動するのが、獲得免疫です。獲得免疫は、出生後に病原体などの異物と接することで誘導される後天的な免疫システムで、適応免疫とも呼ばれています。異物の特徴を記憶しているため(免疫記憶)、再び同じ病原体が侵入してきたり、ガン細胞の発生を見つけたりしたときに、迅速に処理できます。獲得免疫で働く主な免疫細胞を、以下に紹介します。
- B細胞
異物(抗原)に対する「抗体」をつくります。 - ヘルパーT細胞
異物の情報を記憶しているヘルパーT細胞は、排除すべき異物を見つけると、ほかの免疫細胞に攻撃命令を出します。B細胞には抗原情報を伝え、抗体をつくるよう指示するなど、司令塔の役割を担っています。 - キラーT細胞
ヘルパーT細胞の指示を受けて、排除すべき異物を攻撃します。
〜免疫についてもう少し深掘り②【ワクチンの仕組み】〜
獲得免疫の特徴は、一度侵入した異物の情報を記憶できることです。これが「免疫記憶」という機能で、この仕組みを活用しているのがワクチンです。
免疫力を高める5つのポイント
免疫は誰にも備わっているものですが、年齢とともにその働きが低下したり、ストレスなどの影響で十分には機能できなくなったりすることがあります。続いて、免疫力を高めるコツとして5つのポイントを紹介しましょう。
ポイント1:バランスのよい食事

免疫力を高めるためには、バランスのよい食事を心がけることが重要です。主食・主菜・副菜を基本とした献立は、自然と栄養バランスが整うといわれています。それを念頭に、次の3点を意識して摂るようにすれば、免疫力の向上につながるはずです。
- 「善玉菌」を含む食品を取り入れる
腸内には、免疫細胞のおよそ7割が集結しているそうです。なので、免疫力を高めるには、腸内環境を整えることが大切になってきます。善玉菌を含む「納豆」や「ヨーグルト」などの発酵食品、善玉菌のエサとなる食物繊維を多く含む「きのこ類」や「海藻類」などを積極的に摂るようにしましょう。 - 「タンパク質」を含む食品を取り入れる
タンパク質は、免疫細胞の原料になります。「肉」「魚」「大豆製品」などをきちんと摂るように意識しましょう。お手軽に食べられる「魚の缶詰」もおすすめです。 - 「抗酸化作用」のある食品を取り入れる
ビタミンA・C・Eには抗酸化作用があり、免疫機能の低下を防ぐといわれています。それらが豊富に含まれる食材は以下のとおりです。
ビタミンの種類 | 多く含まれる食材 |
ビタミンA | かぼちゃ、にんじん、ほうれん草など |
ビタミンC | ブロッコリー、キウイフルーツ、イモ類、柑橘類など |
ビタミンE | モロヘイヤ、アボカド、ナッツ類など |
ポイント2:質のよい睡眠

しっかりと睡眠時間をとることも、免疫力の向上には欠かせません。獲得免疫は睡眠中に強化されるそうです。睡眠時間の確保が難しい場合は、睡眠の質を高めることを心がけてみてください。ポイントを2点紹介します。
- 夕食は眠る3時間前には済ませる
食べ物の消化には、2〜3時間ほど要するため、眠る直前に食事をすると眠っている間も消化器系が活発に働きます。そのため、リラックスした睡眠を得にくいとされています。
- 寝る前にスマホを見ない
スマホの画面から放たれるブルーライトは、脳を覚醒させ、入眠を妨げるからです。
ポイント3:適度な運動

汗を軽くかく程度の運動は、免疫力を高めるといいます。おすすめはウォーキング。ニコニコ笑いながら会話ができる程度の運動(=息切れしない程度の運動)が適度な状態とされているので、気が置けない人とおしゃべりしながら歩いてみてはいかがでしょうか。
ポイント4:体を温める
体を温めると、免疫力アップにつながります。体温が1℃下がると免疫力は30%低下し、逆に、1度上がると5~6倍程度向上すると言われています。特に冷えが続いてしまわないように、体を温める機会を増やすのがおすすめです。なかでも効果的なのがお風呂(入浴)です。シャワーで済まさず、肩までしっかり湯船につかるようにしましょう。
ポイント5:笑う

笑うとNK細胞が活性化され、免疫力がアップすることは科学的にも証明されています。大笑いはもちろん、クスッと笑うだけでも効果があるそうです。たくさん笑いましょう!
免疫力を高めて、この冬を元気に乗り切りましょう!
免疫は、先天的・後天的に備わった、体の中の素晴らしい防御システムです。ふだん意識することがなくても、体の中では常に働き続けてくれている免疫。日常生活のちょっとした工夫で、その力をさらに高めることができます。たとえば、「笑う」こと。科学的にも証明されている、手間もお金もかからない効果的な方法です。今すぐにでも始めてみませんか?ほかの方法も、気軽に試せるものばかりです。どれかひとつでも日々の暮らしのなかに取り入れて、この冬を元気に乗り切りましょう!

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