天然素材の衣類であたたか生活 〜天然繊維の基礎知識〜

徐々に気温が下がり、寒さがこたえる季節に突入しました。そろそろ冬支度をはじめられているころでしょうか。電気代や灯油代が気になる時期ですが、今シーズンは、暖房費を極力抑えつつ、あたたかな暮らしを実現するために、天然素材の衣類を取り入れてみませんか。今回のテーマは「天然繊維」です。特徴や種類など押さえておきたい基本事項をやさしく解説します。

そもそも、天然繊維ってどんなもの?

衣類に使われる繊維は、「天然繊維」と「化学繊維」の2種類に分類されます。今回は天然繊維がテーマですが、ここでは化学繊維と比較しながらそれぞれの特徴を見てみましょう。

「天然繊維」の特徴と種類

天然繊維は、文字どおり天然の素材が主原料です。さらに、素材の種類により「植物繊維」と「動物繊維」の2つに分かれます。まずは、天然繊維の特徴を見ていきましょう。

天然繊維の特徴

天然繊維は、自然由来の素材が原料なので肌への負担が少なく、肌触りがいいものが多いのが大きな特徴です。また、通気性や吸湿性に優れており、快適な着用感につながります。加えて、保温性に優れているのが魅力。これからの季節、保温性に優れた天然繊維は大活躍です。では、なぜ、天然繊維が保温性に優れているのでしょうか。

たとえば、植物繊維は、繊維の中心部分が空洞になっています(中空構造)。そこに空気を含むことで断熱効果が生まれ、体温を逃さずあたたかさを保てるとされています。一方で、動物繊維の場合、複雑に絡み合った繊維(獣毛)の間に空気の層ができ、断熱材の役割を果たします。これが、熱を逃さずあたたかさを保てる理由です。

また、環境面でも優れており、天然だからこそ自然のなかで分解される点も魅力といえるでしょう。だし、天然繊維には、少し残念な点もあります。とくに綿などの植物繊維はシワになりやすいこと。摩擦に弱く、毛羽立ちが目立ちやすいことや、変色や色落ちしやすかったり、害虫に弱かったりするという特徴も。「取り扱いに注意が必要」というのが天然繊維のネックになるところかもしれません。

天然繊維の種類

では、天然繊維にはどんな種類があるのでしょうか。代表的なものを紹介します。

【植物繊維】

  • コットン(綿)……コットンは綿花の種子からつくられる繊維です。肌触りがよく、通気性・吸湿性に優れているため、肌着やシャツ、パジャマなどさまざまなアイテムに用いられています。
  • リネン(麻)……リネンはアマ科の植物の茎からつくられる繊維です。天然繊維のなかで最も丈夫で長持ちするといわれるほど、耐久性に優れています。吸水性や速乾性が高いので、夏物衣料によく使われています。

【動物繊維】

  • ウール(羊毛)……羊の毛からつくられるウールは、保温効果が高く、寒い季節に最適の繊維です。型崩れしにくく、シワができにくいのもウールの特徴といえます。
  • シルク(絹)……シルクは蚕の繭からつくられます。主成分はタンパク質、18種類のアミノ酸で構成されています。この組成は人の肌の組成に限りなく近く、肌への負担が少ないため、肌が弱い人でも安心して身につけられるといわれています。

「化学繊維」の特徴と種類

化学繊維は人工的に合成された繊維で、「合成繊維」「再生繊維」「半合成繊維」の3種類に分けられます。続いて、化学繊維の特徴を見ていきましょう。

化学繊維の特徴

化学繊維のメリットは、大量生産できるので、比較的安価に購入できること。さらに、加工しやすく、機能がバラエティに富んでいる(冷感、発熱、形状記憶など)のが大きな特徴です。シワができにくく、型崩れしにくいため、普段使いしやすい素材です。

一方で、静電気が発生しやすい、通気性が悪く蒸れやすい、化学薬品を使用しているためアレルギー、肌荒れを引き起こすリスクがある点などのデメリットも。また、天然素材とは異なり、環境への負荷が大きい点にも注目したいところです。化学繊維は、製造時における温室効果ガスの排出(化石燃料を使用するため)や、染色工程での大量の水使用、洗濯による海洋汚染(マイクロファイバーの流出)など、生態系へのさまざまな影響が懸念されています。

化学繊維の種類

続いて、化学繊維の種類として代表的なものを見てみましょう。

【合成繊維】

  • ポリエステル……日本の合成繊維のなかでは最も生産量が多く、ポピュラーな素材。主な原料は石油で、シワになりにくい、丈夫、速乾性があるといった特徴があります。機能性に優れた商品を低コストでつくることができるため、衣料品をはじめ生活用品などさまざまな用途に使われます。
  • ナイロン……ナイロンは主に石油を原料とする合成繊維です。摩擦に強い、軽い、耐久性や防水性に優れているといった特徴があることから、ストッキングやスポーツウェア、レインアイテム、バックなどに利用されています。
  • アクリル……石油を主原料とするアクリルは、ウールに似た性質を持つ、保温性に優れた合成繊維です。軽くて、ふんわりとした弾力があるのも大きな特徴で、フリースやセーター、ニット帽、手袋など秋冬物衣料に多用されています。

【再生繊維】

  • レーヨン ……再生繊維のレーヨンは、原料の木材パルプに化学薬品を加えて溶かしたものを繊維状に再生してつくられます。特徴は、絹に似た光沢とドレープ感。下着や裏地などに使われます。日本でいちばん早くつくられた化学繊維です。

【半合成繊維】

  • アセテート……アセテートは、半合成繊維として、原料の木材パルプに化学薬品(酢酸)加えてつくられます。レーヨンと同様に、シルクに似た光沢やドレープ感が大きな特徴。プリーツ加工がしやすいため、スカートや洋服の袖、襟など装飾部分に使われることが多いです。

秋・冬におすすめ!天然繊維のアイテム3点

天然繊維と化学繊維はそれぞれの特徴を生かして利用され、さまざまな服に加工されています。化学繊維と比べると、自然由来の天然繊維は高価になりがちなのが気になるところです。ですが、天然繊維の衣類は、環境にもやさしく、快適なもの。まずは、手に届く範囲のアイテムから揃えてみてはいかがでしょうか。次の3点はアウターなどに比べると取り入れやすく、効果も実感しやすいのでおすすめです。

インナー(肌着)

天然繊維の良さを余すところなく感じられるのがインナーかもしれません。なかでも、保温性に優れ、肌触りがよいコットンはおすすめの素材。静電気が発生しにくいのもうれしいポイントです。ウールのセーターなど静電気が発生しやすい動物繊維の衣類を着る際に活用してみてはいかがでしょうか。

くつ下

天然素材ならではの温もりを直に感じられるくつ下。天然繊維は吸湿性にも優れているので、足蒸れ防止にも役立ちます

パジャマ

肌が乾燥しがちな冬。かゆみが気になる季節に、肌への刺激が少ない天然素材のパジャマを選ぶのはいかがでしょうか。なかでも、シルクやコットン(とくにオーガニックコットン)はおすすめの素材といわれています。

天然繊維の知識を深め、冬場の暮らしを快適に

できるだけ暖房費の負担を減らしつつ、あたたかな暮らしを実現するには、衣類の選び方がポイントになってきます。天然繊維の衣類は、あたたかさはもちろんのこと、通気性や吸湿性にも優れているため、冬場の乾燥しがちなお肌にはぴったりのアイテムです。環境へのやさしさも魅力のひとつ。2025-26年の秋冬は、暮らしのなかに天然繊維の衣類を取り入れてみませんか。

woody-lab.uo

3,090,626 views

ウッディラボのルーツは、1947年創業の家具屋。木に携わり、木のおかげでこれまで事業を続けてきました。もっと木の良さを活かし、お客様の役に立ちたい。そんな思...

プロフィール

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。