【日本のステキな食文化】年末恒例の「年越しそば」を究める

年末の風物詩となっている「年越しそば」。日本特有の食習慣で、英語ではそのまま“toshikoshi soba”と表現されます。寿司(sushi)や天ぷら(tempura)などと同じように、それにあたる英単語がないからですが、オンリーワンの伝統的な食習慣であるわりに、その意味や由来を知っている人はそう多くありません。

今回は、「年越しそば」の味わい深いお話です。きっと、これまでとは違う一面が見えてくるはず。さっそくのぞいてみましょう!

「そば」は縁起物 だった? <年越しそばの由来>

江戸時代中頃から始まったといわれる「年越しそば」ですが、由来は諸説あります。ここでは、そもそもなぜ「そば」なのか?そして、代表的ないくつかの由来を見ていきましょう。

古くから救荒作物として育てられていた「そば」

痩せた土地でも育ちやすく、播種(はしゅ)からわずか75日で収穫できる「そば」は、古くから日本各地で栽培されてきました。縄文時代の遺跡からは、そばが作付けされていたことを示す痕跡が発見されているそう。文献として初めてそばが出てくるのは『続日本紀』です。養老6(722)年の元正天皇の詔(みことのり)に、飢饉に備えてそばを植えるよう奨励する記述があることから、奈良時代にはすでに救荒作物として栽培されていたというのが通説となっています。

そんな昔から育てられ、米や麦が凶作のときには代用食として人々の命を救ってきたそば。江戸時代中期になると、商家を中心に毎月末日(=晦日[みそか])にみんなでそばを食べる「晦日そば」という習慣が生まれます。何かと忙しい商家の月末、出前で素早く届き、ささっと手早く食べられるそばはうってつけだったようです。住み込みで働く奉公人を労う意味もあったのだとか。この習慣は近年まで残っていたそうですが、やがて、年に12回ある晦日の中でもとくに忙しい大晦日に食べる晦日そばが「年越しそば」になっていったと考えられています。

新年への願いがこもったさまざまな由来

では、なぜ「そば」なのか?諸説ある年越しそばの由来の中でも、代表的な次の5点を紹介します。

  • 生地を延ばして、細長く切った形状にちなみ、寿命や家運、身代が細く長くのびるようにと願ったという説。
  • 金銀細工師が飛び散った金粉を集めるために「そば粉」を用いていたことから、「金を集める」→「金運を呼ぶ」と広まっていった説。
  • 鎌倉時代、博多の承天寺で、年越しにも苦労するような貧しい人々に「世直しそば」と称して「そばがき」を振る舞ったところ、翌年からみな運が向いてきたため、大晦日に「運そば」を食べる習慣ができたという説。
  • 元禄時代の書物「本朝食鑑」にそばの効能が書かれており、それにならってそばを食べ体内を清浄にしてから新年を迎えようという説。
  • そばという作物は多少の風雨にあたっても、翌日、日が差せばすぐに起き上がることから、捲土重来を期待したとされる説。

どれも縁起を担いだものばかり。このように、そばが「縁起の良さ」と結びつくのは、連綿と続く歴史の中で、救荒作物としての役割を担っていたことが大きいのかもしれません。「飢えから救ってくれた」「命をつなぐことができた」という感謝の念が人々の根底にあり、その思いがいつしか「そばを食べると幸せになれる」→「一年の最後に幸せを願って食べる」となっていったのではないかという考え方もあるようです。

昔は、新年に食べていたの!?<年越しそばを食べるタイミング>

現代では、大晦日に食べるものというイメージが定着している「年越しそば」ですが、昔は違いました。なぜなら、今と昔では「一日の始まり」が違うからです。そのあたりを掘り下げて見ていきましょう。

大晦日の夜は新しい年の始まりだった

古くは、日没が一日の終わりと考えられていました。言い方を変えれば、日没以降は、すでに次の日の始まっているということ。つまり、大晦日の夜は一年の最後の夜ではなく、新しい年の始まりだったのです。大晦日の日没後に食べるというのは、1月1日に食べることであり、それが本来の姿だったといいます。今でもその風習が残っている地域があり、たとえば、福島県や山梨県、香川県、愛媛県の一部の地域では元旦にそばを食べるため「元旦そば」や「ついたちそば」などと呼ばれています。

現代における「年越しそば」はいつ食べるのがベストなのか?

現代では、大晦日の夕食として食べたり、23時過ぎ頃から夜食のような形で食べたりするのが一般的ですが、“年越し”なだけに除夜の鐘を聞きながら年をまたいで食べるという人もいるかもしれません。これは本当にさまざまな考え方があるので、誰もが一度は「いったい、いつ食べるのがベストなんだろう?」という素朴な疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。

結論としては、年越しそばを食べるタイミングにルールはありません。前述のように元旦に食べるのが本来の姿とされています。「この時間までに食べなければならない」といった細かなルールにしばられず、楽しく美味しくいただくのがいいようです。ただ、年越しそばには「一年の厄を断ち切る(そばは切れやすいことから)」という意味も込められているといわれているので、そこを重視している人は年内に食べ切るのがいいかもしれません。

今年はこんな「年越しそば」はいかが?<そばがきに挑戦してみよう!>

一口に「年越しそば」といっても、どう食べるかは千差万別。スーパーで購入した麺を使って自宅で用意する人、そば専門店に行く人、自分で打って食べる人、はたまたお手軽にカップ麺をチョイスする人もいらっしゃることでしょう。いろんな食べ方がありますが、今年はいつもと違う、年越しそばを自分で作って楽しむのはいかがでしょうか。

自宅でも手軽にできるそばの楽しみ方として、ご紹介したいのが「そばがき」です。年越しそばの由来のところでお話した中の一つ「世直しそば(運そば)」がまさにそれ。実は、江戸時代の中頃に今のような麺状の「そば切り」が登場するまでは、そばはお米のように炊き上げたり、雑炊にしたり、そばがきにして食べるのが一般的でした。そばがきは誰でも簡単に作れるのもいいところ。遥か昔に想いをはせて、そばがき作りにトライしてみましょう!

<そばがきの作り方>

そばがきは「お椀」で作る方法と「鍋」で作る方法があるのですが、今回は鍋で作る「鍋がき」を紹介します。

〜材料(1人前)〜

・そば粉 80g
・水   1カップ:200cc

〜作り方〜

1.小鍋にそば粉と水を全量入れて、泡立て器でかき混ぜる。
 ※ここではまだ火にかけません。

2.よく馴染んだら、鍋を強火にかけて、木べらなどで練る。
 ※鍋底が焦げつかないように注意。

3.滑らかになるまで練り上げ、好みのかたさになったら出来上がり。
 ※火が通ると色が変わり、生地が重たくなってきます。粘りが出て、ひとかたまりになったら大丈夫でしょう。

4.生醤油にワサビやネギなど好みの薬味を添えて食べる。

コツは水から練ること! お湯で練ると失敗の原因になることがあります。

*食べ方のワンポイントアドバイス

できたてのそばがきは、生醤油で食べるのがポピュラーですが、「そばつゆ」や「そば湯」に浮かべて食べるのもおすすめです。あんことの相性もいいので、お汁粉にしても◎。お餅よりもヘルシーにいただけます。そば粉を使った料理の原型であるそばがきは、風味豊かで酒の肴としても好まれています。年末年始のお酒のお供にもいいかもしれません。

「年越しそば」はルールを気にせず、楽しく美味しくいただきましょう

大晦日に「年越しそば」を食べるのは、当たり前の習慣になっていますが、その由来などを知っている人はそう多くありません。歴史をたどると、お正月に食べるのが本来の姿だったという意外な事実も見えてきますが、今も昔も変わらないのは、開運や健康長寿を願って食べること。大晦日の何時頃食べよう?とか、細かなルールは気にせずに、新年がより良い年になることを願いながら、楽しく美味しくいただくのが「年越しそば」の真髄かもしれませんね。

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