森林浴に出かけてみませんか?〜森の中で心と身体をリフレッシュ〜
夏を迎え、木々の緑がいっそう深まってきました。森林浴にはうってつけの季節です。緑の中にいると、心も身体も元気になっていく感覚を覚える人は多いはず。その感覚、単なる思い込みではありません。さまざまな科学的根拠が示されています。今回は、森林浴についてのお話です。言葉の定義から効果的な楽しみ方まで幅広く紹介します!
「森林浴」とは?
なんとなく漠然としたイメージがある森林浴。その輪郭を明確にすべく、まずは言葉の定義から見ていきましょう。
森林浴の定義
「森林浴」は、1982年に林野庁により提唱された用語で、次のように定義されています。
『森林環境の自然が彩なす風景や香り、音色や肌触りなど、森林生態系の生命や生命力などに対して、五感を通じて感ずることによって、人々の心と身体の健康回復・維持・増進を図ること』
参照:森林療法(セラピー)の確立と普及に向けて–森林浴を次のステージへ(林野時報)
簡単にまとめると、「森の中で過ごしながら、五感を使って自然に親しみ、健康になろう」ということ。日本で誕生した森林浴は、いまや海外でも「Shinrin- yoku」と呼ばれるまでになり、誰でも楽しめる健康的な過ごし方として、世界中に広まっています。
〜森林浴こぼれ話 ①〜 長野県上松(あげまつ)町にある「赤沢自然休養林」は、森林浴発祥の地。樹齢300年を超える木曽ヒノキの天然林で、日本三大美林の一つです。全国初の自然休養林(※)でもあります。 ※自然休養林とは、国民にレクレーションや憩いの場を提供する目的で、国有林内に設けられた森林エリアのこと。とくに景観が美しい森林です。 |
森林浴にはどんな効果があるの?
ここからは、森林浴の効果について解説していきます。どんな効果が期待できるのか、さっそく見ていきましょう。
メリットいっぱい!森林浴ってすごい
さまざまな実験や調査により、森林浴には次のような効果があることがわかっています。
- ストレスホルモンの低下
- 脈拍、血圧の低下
- NK活性の上昇(免疫能が高まる)
- 抗がんタンパク質の増加
- 自律神経の安定
- 血液浄化
- 疲労回復
など
このような効果が得られるのは、「フィトンチッド」の働きによるところが大きいといいます。森林浴の真髄ともいえるフィトンチッド。次項で詳しく紹介します。
森林浴の効果「フィトンチッド」とは?
「フィトンチッド(Phytoncide)」は、テルペン類などの揮発性物質で、植物から発散される香り成分の総称です。可愛らしい響きを持つ言葉ですが、フィトン(phyton)は植物、チッド(cide)は他の生物を殺す能力を有する、というちょっと強い意味があります。
自由に動き回ることができない植物は、有害な微生物や昆虫などから身を守るために、また自らの成長を促すために、フィトンチッドを放出しているのだそう。そんな視点で見ると、フィトンチッドという名前(造語)はまさに至言ではないでしょうか。それもそのはずで、フィトンチッドの名付け親は、「植物を傷つけると、その周囲の細菌が死ぬ現象」を発見した旧ソ連の生物学者トーキン博士なのです。植物にとっては、生きるために発するフィトンチッドですが、人間にとっては上手に活用することでさまざまなメリットを得らえるもの。フィトンチッドの効果や作用としては、以下のような点が挙げられています。
- 害虫忌避効果
- 殺菌・抗菌作用
- 消臭・脱臭効果
- 精神安定効果(リラクセーション効果)
など
フィトンチッドは、簡単にいうならば「森の香り」です。森の中に入ったときに感じるあの独特の香りがフィトンチッドであり、森林浴の気持ちよさの正体です。暑さが本格的になるこれからは、森林浴のベストシーズン。というのも、気温の上昇に伴って、フィトンチッドの放出量が増えるからです。フィトンチッドの量は気温と相関があるため、季節によって変化するといわれています。気温が高くなる6月から8月にかけては多くなり、秋から冬にかけては少なくなるそう。
さらに、フィトンチッドの量は一日のなかでも変動があり、いちばん多くなるのが午前中です。加えて、樹種によってもフィトンチッドの量が違います。一般的には広葉樹よりも針葉樹に多く含まれているそうです。
〜森林浴のこぼれ話 ②〜 タマネギを刻むと、特有のにおいがして、涙まで出てきます。理由は、タマネギが刺激のある揮発性の成分を放出するから。じつは、これもフィトンチッドの一種なのです。 |
「五感」を刺激する森林浴
森林浴で得られる効果は、フィトンチッドによるところが大きいですが、それだけではありません。人間に最も見やすい色といわれる「緑」を見ることで、目が休まるだけでなく、気持ちまで落ち着かせてくれるといいます。耳からの刺激も特筆すべき点です。森の中は、枝葉がそよぐ音や小鳥のさえずり、近くに川が流れていれば川のせせらぎなど、自然が奏でる音色に満ちあふれています。それらの音は「1/fゆらぎ」と呼ばれ、人間に安らぎを与えてくれます。森林浴は、ひとつだけの要素からではなく、五感に働きかけて健康に良い効果をもたらしてくれるのです。
森林浴を効果的に楽しむには?
最後に、森林浴の効果的な楽しみ方を紹介しましょう。
<頻度>理想は週1回
週1回の森林浴が理想的とされています。その根拠となるのが、免疫機能の研究結果です。日帰り森林浴の実験をしたところ、森林浴後に免疫能が高まり、ガン細胞を攻撃する「NK(ナチュラルキラー)細胞」の活性が1週間持続したという結果が得られたという報告も見られました。遠くの森までは行けなくても、せめて週に1度は木々のある公園などで過ごしてみてはいかがでしょうか。
<場所>木々のある近くの公園でもOK
森林浴というと、奥深い森を思い浮かべるのではないでしょうか。街の喧騒から離れ、どこか遠くへ行かなければ、と。もし行けるのであれば、それはもちろんベストです。ただ、なかなかそこまでは難しいという人も少なくないでしょう。そんなときは、木々のある近所の公園に出かけるだけでもOK。お寺や神社もおすすめです。ただし、注意したいのは、うっそうとして暗かったり、手入れがされていなかったりする場所に立ち入ってしまうこと。いくら樹木があるといっても、安全が保たれない可能性がある場所は避けましょう。
<時間>15分ほどでも効果アリ! 朝の時間帯がベスト
森林浴は1週間に一度、2時間程度行うのが理想といわれていますが、わずか15分でもリラックス効果やストレス軽減効果があらわれるそう。時間帯は、フィトンチッドがいちばん多い午前中がベストです。
<過ごし方>五感を使うことを心がける
森林浴の定番は、やはり散策です。少し汗ばむ程度に歩くとより効果的なのだとか。ただ、絶対に無理はしないこと。がんばって歩く必要はありません。座ってくつろいだり、横になって休んだりと、ゆったり過ごすだけでもいいそうです。お弁当を食べたり、読書をしたりしてみるのもいいかもしれません。ゆったり過ごすなら、自然の中に身をおいて、風を感じたり、香りを楽しんだりしながら、五感を使うように心がけましょう。
〜森林浴 服装の注意点〜 森林浴は自然のなかで行うため、虫に刺されたり、植物にかぶれたりする恐れがあります。なので、服装は長袖・長ズボンが基本です。帽子があれば、なおいいでしょう。足元は歩きやすいスニーカーなどを選ぶこと。 |
森林浴をもっと気軽に!
森林浴は大自然のなかで行うもの、という先入観を持っている人は多いかもしれません。ところが、実際はもっと気軽に楽しめるものなのです。たとえば、木々が生い茂る公園や緑豊かな神社の境内だってOK。なんだか森林浴がグッと身近に感じられてきませんか? 森林浴の時間も、理想的には1〜2時間ほどといわれていますが、わずか15分でもリラックス効果やストレス軽減効果があらわれるそうです。まずは、ちょっとしたスキマ時間を利用して、近くにある緑と触れ合ってみてはいかがでしょうか。
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